石巻市雄勝町へ。 ―その2―


朝起きて、外を見て茫然とする。
すぐ隣の家も半壊しており、海沿いは完膚なきまでに壊されていた。
家があっただろうコンクリートの土台がわかるだけに胸が詰まる。

それでも、子どもたちはぐにゃぐにゃになったガードレールで遊び、
『○○工務店』はプレハブで営業再開し、『OH-! Guts!』は今日は
100人単位の復興イベントをやろうとしている。

自然の力もすごいが、人の力もすごい。

この日は雄勝町役場で復興市が出ており、その横でホタテの耳つり
作業というのを手伝わせていただいた。

参加者は『育ての住人』の皆さんと地元漁師さんたち。
すごく新鮮で、心地よい時間だった。
最初は参加者の方の人柄や、イベント主催者の気配りかなーと
思っていたのだけど、もしかしたら海が成す空気かもしれない。


復興市でラーメンをすすりながら、いろいろな人の顔を見ていた。
みんなそれぞれに悲しみや苦しみや恨みがあるのかもしれないが、
僕にはそれが見えなかった。
もうみんな立ち上がっているのかもしれない。
「起こったことは仕方ない」というおばあさんのつぶやきが誰か
の会話の中から聞こえた。

イベント終了後、一緒に行った森村隆行とハワード栗山と三人で
町中を車で一通り回ってみる。




撤去されているとはいえ、瓦礫の山や廃屋、ひっくり返った車や、
ひしゃげたガードレール、そういったものがほとんどだ。
ハワードとも車中で話したのだけど、この光景に段々慣れてくる。
徐々に、それが“普通”になってくる。

PARACUPでサマスペを支援したこともあり、雄勝中学校にも行った。
水が屋上まで達しているのを見て、言葉を失う。
少し建物の中をのぞいてみたけれど、学校で働く僕にとっては、
見慣れた什器や備品が多すぎて、苦しくなる。

『自分ならどうするだろう』

そういうことをいろいろな場面で考えることがある。
でも、雄勝中学校を目の前に何も考えられない。
『自分で』なんて到底無理だ。
想像する時間があるのなら、ひとつでも多くの瓦礫を拾うほうが、
一回でも多くの汚泥を取り除くことが求められるだろうと思う。

ちょっとずつ進むしかない。
できることからやるしかない。
でも、一気に片付けたいし、一飛びに復活したい。

現地はそういう思いと常に戦っているのだと思う。


僕はそうやってスクラムを組んで進もうとする現地を少しでも
後ろから押してあげたいと思った。
そのスクラムの前に立って「がんばろう!」とか「こっちじゃ
ない、あっちだ!」とか、そういうのは絶対にやりたくない。

現地は、もうスクラムを組んで、立ち上がろうとしているのだ。
そのスクラムに最後方から入って、押し上げる。
力は微力だけど存在を感じる。そんな形がいいのかもしれない。



そんな形がいいのかもしれない。