石巻市雄勝町へ。 ―その1―


話しの発端は木曜日。
森村隆行の話を何度聞いても同じ目線に立てないもどかしさを感じ、
急遽、宮城県石巻雄勝町に行くことにした。

週末にはあれがあってこれがあって、その次にはあの人に会って、
なんて具合に春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が来てしまった。
そんなことはない、と否定したいところだけど、いつの間にか自然
と『行かない理由』を探してしまっていたかもしれない。

雄勝には盟友山本ケイイチがメンバーである『OH-! Guts!』があり、
今回は復興プロジェクト『育ての住人』のためのイベントがあると
いうことだったのだけど、僕としては、まずは被災地をこの目で見
たいという想いがどうしても先を走っていた。

二日酔いの頭を抱きかかえるようにして新幹線に乗り込み、何もせ
ずにあっという間に数時間が経った。

雄勝に着いた18時頃には、辺りは既に真っ暗だった。
これは翌朝気づくことになるのだけど、津波で明かりがないのだ。
海沿いは家も、街灯も、すべてが流されていた。奪われていた。
自動販売機の明かりの妙な不気味さだけが頭の片隅に残る。

夜はOH-! Guts!の代表で漁師の伊藤さんや創設メンバーの立花さん、
それを支える方々とお刺身、いくら、日本酒をふんだんにいただく。
立花さんは震災後、東京―雄勝間を既に89回往復しているそうで、
お話しや話し方からもこの会社やプロジェクトにかける想いが伝わ
ってくる。曰く『色々な形で5万人が関わる町にしていきたい』。

参加者の多くは東京近郊から駆け付けたボランティアで、彼らの想
いや行動力、決断力、体力に、自分自身突き動かされる。

まだこの地の状況がわからないまま夜を迎える。
酔い潰れたあと、深夜に地震があった。

まだ何も知らない。まだ何も見えない。